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身のうさは人しも告じあふ坂の
夕づけ鳥よ秋も暮れぬと

歌の意味
夫の言葉だけを頼りに待ちつづける、この私の身の情けない哀れさは、いかなる人でもあの人に伝えることはできないだろう。逢い、告げると名のる逢坂山の夕づけ鳥よ、私とともに、待ちかねた秋も暮れてしまうと鳴いておくれ。
鑑賞
巻二 浅茅が宿
物事を面倒がる勝四郎が妻・宮木を家に残し都へ商いに出る。勝四郎が都へ発った後、家がある関東は戦火に包まれる。
勝四郎は秋にはもどると宮木にいったが、戻らずに年が暮れた。
勝四郎を待つ宮木が詠んだ歌。

わが身の憂さとは、当てにならない夫の言葉だけを頼りにして待ち続けようとするわが身を情けなく思う心。
「人しも告げじ」は自分以外の誰にも告げるものではないという思い。
「木綿付け鳥(ゆうづけ鳥)」は転じて夕告げ鳥でにわとりの事。逢坂のゆうづけどりは歌の題材で、多くは恋しく思って鳴くさまのたとえ。
作者
上田 秋成
出典
雨月物語

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