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いにしへのにほひはいづら桜花
こけるからともなりにけるかな

歌の意味
過ぎ去ったかつての艶やかな美しさはどこ行ってしまったのか。桜の美しい花を散らして、みすぼらしい姿になってしまったことだ。
鑑賞
六十二 いにしへの

 男が何年も訪ねて行かなかった女がいた。女は聡明ではなかったのであろうか、あてにもならない人の話に従って地方に住む人に使われた。以前の夫であった男とは気付かず、食事を出したりした。
 夜になり男は家の主人に「さっきの女の人をこちらへ連れてきてほしい」と言って、主人は女を連れてきた。
 歌は女に「私を知らないか」と言った男が詠んだ。

 かつては美しかったであろう女が使用人に身を落とし、みすぼらしい姿になってしまったことを率直に表現した歌である。本人を目の前に蔑む表現の歌を詠む男は女に対して、どういった心情を抱いたのか。執着などの強い感情は無いようにも取れる。
作者
出典
伊勢物語

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