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濡れつつぞしひてをりつる年の内に
春はいくかもあらじと思へば

歌の意味
雨に濡れながら無理に藤の花が咲いている枝を折りました。今年のうちに春は幾日もないだろうと思ったので。
鑑賞
八十 濡れつつぞ

 没落した家に藤の花を植えた人がいた。陰暦三月の末、晩春のころに雨がしとしとと降っている日に、ある人のところへ藤の花を折ってさしあげようとした。
 歌は藤の花に添えるために詠まれた。

 歌には晩春で藤の花が鮮やかで美しい間にお目に掛けようと思って折ったという意味が込められている。

 『業平集』に「ぬれつつぞしひて折りつる藤の花春はけふをしかぎりと思へば」として収録されている。つまり没落したのは業平の家で在原氏のことである。藤の花は時の権力であった藤原氏を連想させ「しひておりつる」とあるので、業平の藤原氏に対する反逆的な思想や恨み、憎しみの感情が詠まれていると解釈することもできる。
作者
出典
伊勢物語

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