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咲く花の下にかくるる人を多み
ありしにまさる藤のかげかも

歌の意味
大きく美しく咲く花房のかげに入る人が多いので、さらに立派に見える藤の花のかげであることだ。
鑑賞
百一 咲く花の

 左兵衛府の長官であった在原の行平という人がいた。行平の家に良い酒があると聞いた人々が、清涼殿の殿上の間に仕えていた左中弁(朝廷の重職)の藤原良近という人を正客に宴を開いた。
 行平は風流を解する人であったので、花瓶に花をさしていた。その花は花房が一メートルぐらいの珍しい藤の花だった。宴の席にいた人たちはその見事な花を題にして歌を詠んだ。詠み終えるころに行平の弟が宴が催されていると聞きやってきた。つかまえて歌を詠ませようとするが、男は歌のことを知らなかったので辞退したけれども無理やり詠まされる。
 歌は他の人と同じく大きな藤の花を題にして詠んだ。
 この歌を聞いた人々は「どうしてこのように詠むのか」と問うと「太政大臣が華やかな繁栄の絶頂にあって、藤原氏がとりわけ栄えるのを思って詠んだ」と答えた。

 歌でも登場する「藤」の花は藤原氏にたとえて詠まれている。藤原氏の強大な権力に人々が追従するので、権力はますます大きくなるだろうという意味だろうか。藤原良近を客に招いて大きな藤の花を用意して、それを題にして歌を詠ませるという宴の趣向自体に藤原氏への心象を良くしたいという気持ちがあるのだろう。そう考えると、この歌は藤原氏に媚を売る人たちを揶揄しているように取れる。
 詠み人である行平の弟は業平のことで、才気がありながらも藤原氏のかげに隠れてしまい不遇を送る心情が表れているのではないか。
作者
出典
伊勢物語
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