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百年に一年たらぬつくも髪
我を恋ふらし面影に見ゆ

歌の意味
百歳に一年足りない年をとったぼさぼさの白髪の老婆が私を恋しく思っているらしい。まぼろしになって見える。
鑑賞
六十三 つくも髪

 ある男を恋しく思う女がいた。情愛の深いであろうその男に逢うことができればいいなと思うが、そのようなことを言い出すきっかけもない。なので自分の三人の子供を呼んで夢の話をする。二人の子供はそっけなく返事をしたが、三男は「よいお相手の男がきっと現れるでしょう」と夢解きをすると、母親であった女はとても機嫌がよい。
 三男は「ほかの男は情が薄い。情が深いと評判の母親が恋しく思う在五中将に母を逢わせてやりたい」という思いがある。三男は在五中将が狩であちこち歩いているのに出会って自分の気持ちを伝える。在五中将は心を動かされ、女のところへやってきて共寝をした。
 その後、男がやって来ることはなく、女は男の家に行って覗き見をした。
 歌は男が覗き見をする女を見て詠んだ。

 つくも髪は百から一を引いて九十九で「つくも」とよむ。その数字からたいへんな老齢の髪が短くばさばさになっていることを意味する。また百から一たらないことから百の字の一画目を取ると「白」という字になるので白髪との掛詞にもなっている。

 在五中将(ざいごちゅうじょう)は在原業平のことである。阿保親王の五男で右近衛権中将であったのでこう呼ばれた。
作者
出典
伊勢物語
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