- 歌の意味
- 旅先で仮寝をするために枕として草を結びあわせるつもりはない。秋の夜長もたのみにできない夜なのだから。
- 鑑賞
- 八十三 草枕
昔、惟喬(これたか)親王はよく都から水無瀬の離宮へと出かけた。いつものように鷹狩りのお供を馬寮の長官である老人がつとめた。何日か過ごした後に都の御殿に戻った。
馬寮の長官は御殿までお見送りをして早く自分の邸に帰ろうとしたが、親王がお酒を出し、狩りのお供と見送りのほうびに賜り物を与えようと馬寮の長官を帰さなかった。
歌は帰宅の許しを得たい馬寮の長官が詠んだ。
時期は陰暦の三月で親王は寝所に入ることなく、ともに夜を明かした。
晩春の夜は秋のように長くないので早く家に帰って眠りたい、ぐらいの意味の歌だろう。皇族である惟喬親王にこういった歌を詠む事のできる馬寮の長官と、それでも徹夜の付き合わせる親王の間柄を見てとることができる。
馬寮の長官は在原業平のことで惟喬親王とは姻戚の関係に当たる。
- 作者
- 出典
- 伊勢物語