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松山の浪のけしきはかはらじを
かたなく君はなりまさりけり

歌の意味
古歌に詠まれてきた、この松山の岸に寄せる浪の景色は昔どおり変わることはあるまいと思うのに、同じように永遠普遍だと思われた君は今、まうますあと潟(形)もなくなられていくことよ。
鑑賞
巻一 白峰 『古今集』巻二十「君をおきて あだし心を わがもたば 末の松山 浪も越えなむ」をふまえた西行法師の歌。 潟は干潟、形との懸詞で浪の縁語。『古今集』の歌をふまえて 「私はあなたにあだし心(背き離れる心)をもちはしなかった。だから松山の波の景色はかわるはずもない。だのにあなたの方は、どんどんお変わりになられ、形までもなくなられようとしているとは」と、やや恨むような心をこめてある。 <読み手の(私)はこの歌に宿世の業に捕らわれた新院を納得させ鎮める気持ちをこめたつもりであるが、歌の表現には反対に形なくなられる無念さに同情し惜しむ心がにじんでいる>
作者
上田 秋成
出典
雨月物語

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