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さりともと思ふ心にはかられて
世にもけふまでいける命か

歌の意味
それでも、きっと帰ってくると期待するわが心に乗せられひきずられて、よくもまあ、今日まで生きてきてしまったことよ。これが私の命というものなのか。
鑑賞
巻二 浅茅が宿 妻・宮木が死ぬ前に詠んだ歌。 男が約束を果たさなかったけれど、それでも望みを捨てずに帰り来て約束がはたされるのを待つ。そういう自分の心にひきずられて、結果的には裏切られたことになったと思わざるをえないと嘆きあきらめる歌。 自分の生が自然な情愛に引かれてきた心の軌跡として振り返り、見とめたもの。 夫の勝四郎は商売をするために京へ行った。その年の秋には帰ると妻に約束したが、山賊に襲われたり、病気になったりと七年が経ってしまった。 妻の宮木は勝四郎が京へ行った翌年に亡くなったが、七年ぶりに帰った勝四郎は宮木と再会した。しかし次の日の朝、朽ち果てた家と宮木の残した歌で再会した宮木は幽霊であったと知る。
作者
上田 秋成
出典
雨月物語
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