- 歌の意味
- 忘れ草が生い茂る野辺と見るだろうが、これは忍ぶ草でこれから後も頼りにするつもりだ。
- 鑑賞
- 百 こは忍ぶなり
ある男が後涼殿と清涼殿の間のせまい通りすぎたところ、ある高貴な女の部屋から萱草(かんぞう)を「これを忍ぶ草といいますか(忘れてしまっているのに、思っているなど嘘なのでしょう)。」と言って侍女を使い、男にお与えになった。
歌は男が萱草を頂戴して詠んだ。
忘れ草と忍ぶ草は少し形が似ている。女が男に忘れ草を与えたのは、男の気持ちを問いただした形でなじっている。
歌は私があなたのことを忘れたように見えるだろうが、あなたへの恋を人目につかぬよう忍んでいるのです。こんなに言葉をかけてくださる以上、これからもあなたを頼りに生きて行くつもりですという意味で詠まれている。
- 作者
- 出典
- 伊勢物語