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名のみたつしでのたをさは今朝ぞなく
庵あまたとうたまぬれば

歌の意味
悪い評判ばかり立って、ほととぎすは今朝はまた今朝で、あちらこちらに自分の巣も定めないで渡り歩くといって嫌われ仲間はずれにされてしまったので、泣いています。
鑑賞
四十三 ほととぎす

賀陽の親王(かやのみこ)という皇子がいた。その皇子がある侍女に好意を抱きいろいろと用事をさせていた。しかし、ある男が侍女に好意を見せて振舞った。この男は自分だけが侍女と関係を持っていると思う暢気な男だった。
さらに別の三番目の男が侍女が色めかしく浮気な女と聞き、趣向を凝らしてほととぎすの絵を描いた手紙を送った。

歌は三番目の男が手紙で詠んだ「ほととぎす汝がなく里のあまたあれば猶うとまれぬ思ふものから」に対する返歌。
女は男が自分に気があるのを察して、この歌を詠んでいる。

しでのたおさ(死出の田長)はほととぎすのこと。五月に南方から渡来して八、九月に南へ帰っていく渡り鳥である。ここでは、定着性がないことを非難する意味を持つ。蜀王の魂が化したとも山を越えて死の国を往来する鳥ともいう。五月の田植えを促し、農繁期にしきりに鳴いて業をすすめるという意味から「死出の田長」と呼ばれた。
作者
出典
伊勢物語

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