世をうみのあまとし人をみるからに
めくはせよともたのまるるかな
- 歌の意味
- 海で海女として暮らしている人だとお見うけするので、お目にかかると海藻を食べさせてもらいたいと心まちにしてしまう。
- 鑑賞
- 百四 世をうみの
特別な理由もなく尼になってしまった人がいた。飾り気のない出家姿になり目立たなくなっているけれど、世間の人が見物するようなものに興味を引かれたのか加茂の祭を見物にでかけた。
歌は男がに詠んでやった。
尼は伊勢の斎王を勤めていた。その方が見物のために乗ってきた車に男が歌を詠むので見物を中止して帰ってしまった。
この歌では多くの掛詞が使われている。
「うみ」は倦みと海、「あま」は尼と海女、「みるからに」は見るだけでと海藻の海松、「めくはせよ」は目で合図をなさいと海藻の布(め)をたべさせよの掛詞である。
この掛詞を踏まえた歌の意味は、世の中がつらくなって出家した尼とお見受けするだけで、目で合図をしていただきたいと心まちにしていますということである。
伊勢の斎王を勤めたということは皇族なので、人目につく祭見物の軽挙を非難しつつも境遇に同情して人目につかないように声をかけてくれれば話相手ぐらいにはなろうといったところか。