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人はいさ心もしらずふるさとは
花ぞ昔のかににほひける

歌の意味
あなたは私のこともご存知なくそのようにおっしゃるが、昔なじみのこの宿では梅の花だけが私の心をよく知っていて、昔と変わらない香りで私を迎えてくれている。
鑑賞
巻第一 春歌上

初瀬観音に参詣するたびに泊まっていた家に、久しぶりに行ったところ、
その家の主人が「このようにちゃんと宿はあるのに」と言ったので、植えてあった梅の花を折りとって詠んだ歌。

家主は長い間、宿泊してくれなかったと愚痴をこぼしたことに対して、梅の花が私を昔と同じような心で迎えてくれていると、作者の心を自然に託して訴えている。

歌に対して家主は
「花だにも同じ心にさくものを植ゑたる人の心しらなむ」
と返している。
返歌によると、梅の花でさえも同じ心であるから、それを植えた私の心も知ってもらいたいと巧みに答えている。
作者
紀貫之
出典
古今和歌集

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