- 歌の意味
- 葎(むぐら)が生えている家が気味悪くいやな感じがするのは、一時のことにもせよ、稲刈りをしようとすると鬼が集まることだ。
- 鑑賞
- 五十八 荒れにけれ
思いやりのある女好きの男が旧都の地、長岡に家を作って住んでいた。
その隣にあった宮様のところにまあまあの女たちが来て、都外れの田舎だったので男は田の稲刈りをしようと用意をしているのを見た女たちが「たいそうな風流人のする仕事ですね」と集まって男の家に入ってきたので、男は家の奥へ逃げて隠れてしまった。
女が「荒れにけりあはれ幾世の宿なれや住みけむひとのおとづれもせぬ」と詠んで宮様の住居の方に集まって座り込んだ。
歌は男が詠んで女たちに差し出した。
鬼はもともと死者の霊魂のことを言ったが、次第に人に災いをもたらすものをいうようになった。悪鬼が男に近づく時には美しい女の姿である場合が古来説話などにみられる。
男が詠んだ鬼とは女たちのことを美しいという意味で鬼の仮の姿であろうと冗談を言っているが、女たちに良い印象は持たなかったのではないか。
- 作者
- 出典
- 伊勢物語