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袖ぬれて海人の刈りほすわたつうみの
みるをあふにてやまむとする

歌の意味
袖を濡らして漁夫が刈り取って干す海松(みる)を思っているだけで、袖を涙で濡らしながら切に頼む私の顔を見るだけですませようとするのか。
鑑賞
七十五 大淀の

 ある男が女に「あなたを伊勢の国につれて行っていっしょに住みたい」と言った。
 歌は女が詠んだ「大淀の浜に生ふてふみるからに心はなぎぬ語らはねども」に対する男の返歌。

 一緒に伊勢で暮らそうという男の誘いを冷淡に断った女に、男は歌に「それはあんまりだ。」という意味を込めて詠んだ。女を口説いて、なんとか一緒に暮らしたい男の切実さが伝わる。

 袖ぬれては、海松(みる)をとるために漁師が袖を海水で濡らすのと、男が女にふられて涙で袖を濡らす意に掛けている。
 わたつうみは「わたつみ」と同じく「わた」は海、「つ」は「の」、「み」は神のことで、つまり海の神をいう。
作者
出典
伊勢物語

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