古典和歌stream
表題
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伊勢物語
涙にぞぬれつつしぼる世の人の
つらき心は袖のしづくか
歌の意味
私が涙で濡らした袖をしぼると、したたり落ちる雫はあなたの無情な心そのものか。
鑑賞
七十五 大淀の
ある男が女に「あなたを伊勢の国につれて行っていっしょに住みたい」と言った。
歌は女が詠んだ「岩間より生ふるみるめしつれなくは潮干潮満ちかひもありなむ」に対する男の返歌。
私を袖をしぼれるほど涙を流して悲しんでいるのに、あなた平然としているものだと言う意味で詠まれている。
この段では男の誘いにまったく心を動かさない女が男との歌のやり取りを通じて描かれている。
作者
出典
伊勢物語
その他の歌
袖ぬれて海人の刈りほすわたつうみのみるをあふにてやまむとする
岩間より生ふるみるめしつれなくは潮干潮満ちかひもありなむ
大原や小塩の山もけふこそは神世のことも思ひ出づらめ
山のみなうつりてけふにあふ事は春の別れをとふとなるべし