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月見ればちぢに物こそ悲しけれ
わが身ひとつの秋にはあらねど

歌の意味
月を見るとあれこれ限りなく悲しい思いが募ってくる。私ひとりの秋ではないのに。
鑑賞
巻第四 秋歌上

 是貞親王家の歌合せに詠んで番われた歌。

 月を見て悲しい感情にとらわれるというのは平凡な表現であるが、「わが身ひとつの秋にはあらねど」と自分に言い聞かせるような下の句に含みがあり、やはり私ひとりを悲しませるために秋があるように思えるといった孤独な悲しみを感じさせる。

 「千々に乱れる」に使われる「ちぢに」と「わが身ひとつ」を千と一で対照にする技巧が用いられている。

 またこの歌は小倉百人一首にも採られている。
作者
大江千里
出典
古今和歌集

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