思い遣れしばしと思う旅だにも
なお故郷は恋しきものを
- 歌の意味
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察してくれ。しばらくの間と思っている旅でさえ、やはり故郷は恋しいものなのだから。
- 鑑賞
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巻第二 卒都婆流し
康頼が千本の卒都婆に書きつけた二首のうち、二首目にあたる。一首目の「薩摩潟」が親に宛てた伝言であるのに対して、こちらは宛先を持たない。
卒都婆は一本ずつ波に乗せて流された。どこへ流れ着くか、誰の手に渡るかは、まったくわからない。そのわからなさを前提にして書かれているのがこの一首である。
結果として、そのうちの一本が安芸の厳島に流れ着き、康頼ゆかりの僧に拾われて都へ運ばれた。歌は後白河法皇の目にとまり、重盛を経て清盛にまで届く。清盛のような人物でさえ哀れと思ったと物語は伝えており、翌年の赦免の伏線となる。
「思ひやれ」という命令形で始まりながら、誰に向けたとも書かない。流れ着いた卒都婆を拾うであろう、見知らぬ誰かに向けられている。
論法は明快である。しばらくの間と思っている旅でさえ、やはり故郷は恋しい。まして、いつ帰れるとも知れぬこの身の思いはどれほどか——そこは言わない。「だに」の一語が働いて、言わない部分にすべての重さがかかる仕組みになっている。自分の苦しみを直接には述べず、読む者の想像に委ねる作りである。
一首目が親という特定の相手に向かうのに対し、こちらは不特定の他者に向かう。二首を並べて流すことで、誰の手に渡るかわからないという状況そのものが、歌の形をとっている。実際にこの歌は見知らぬ僧に拾われ、宛先のない呼びかけが応えられることになった。
思ひやれ……察してくれ。想像してみてくれ。
しばし……しばらくの間。
旅だにも……旅でさえも。
なほ……やはり。
故郷……生まれ育った土地。ここでは都。
ものを…………のだから。詠嘆を伴う。
藻屑……波に漂う海藻のくず。
厳島……安芸国の社。平家が篤く信仰した。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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