蜻蛉日記 - 藤原兼家
噂に聞くばかりでは切ないことだ、ほととぎすよ。じかに語り合いたいと思う心がある。
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蜻蛉日記 - 藤原道綱母
語り合う相手のいない里で、ほととぎすよ、甲斐のないその声を鳴き古してくれるな。
心もとないことだ。音のしない滝の水なのだろうか。行方も分からない瀬を探し求めている。
人知れず今か今かと待っているうちに、返事が返ってこないのがつらいことだ。
浜千鳥の足跡もない渚のように、あなたの筆跡でない文を見るので、私を越す波が跡を打ち消してしまったのだろうか。
どちらとも分け隔てしない心は添えてあるけれど、今度は、以前に見たことのない人のもとへ。
鹿の声も聞こえない里に住んでいながら、不思議にも、逢えないというつらい目を見ることだ。
高砂の尾上のあたりに住んでいるとしても、そのように目が覚めるはずの目に遭うとは聞かないのに。
逢坂の関とはいったい何なのだろう。近いけれど越えかねているので、嘆きながら日を過ごしている。
越えかねるという逢坂よりも、噂に聞く勿来の関のほうを、越え難い関だと知ってほしい。
夕暮れに流れ来る車を待っている間に、涙は大井の川となってしまう。
物思いの多い大井の川の夕暮れは、心ならずも流れてしまうのだ。
東雲の空に起きたときには思いもよらず、不思議にも露のように消え入る心地になってしまった。
定めなく消え入ったという露よりも、あてにならない期待をしている私はいったい何なのだろう。
思いがけない垣根にいるので、撫子の花には露もたまらないのだ。
消え入るような涙の露もまだ乾かない袖の上に、今朝は時雨れる空までもがひどいことだ。