しらなみの衣の袖をしぼりつつ
きみゆゑにこそたちも舞はれね
- 歌の意味
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白波のように白い衣の袖を涙で絞りながら、あなたゆえに、立って舞うこともできないのです。
- 鑑賞
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巻第四 還御
その後、御前に人々が多く集まって、戯れごとが交わされた。そのとき上皇が、「白い絹を着た内侍が、邦綱卿に心をかけているな」と言ってお笑いになる。五条大納言邦綱は大いに否定して抗弁していた。
ちょうどそこへ、文を持った召使いの女が参って、「五条大納言殿へ」と言って差し上げた。「それみたことか」と、満座が興あることとして言い合う。大納言がこれを取って開いて見ると、記されていたのがこの一首だった。
上皇は「優雅に思う。この返事はしなくてはならぬぞ」と仰せになって、すぐに御硯をお下しになった。
「しらなみ」は白波であり、同時に内侍の着ている白い衣でもある。その袖を絞るのは涙のためで、白い色が波と衣と涙を一つにつないでいる。
「たち」には、衣の縁語である「裁つ」と、立ち上がるの「立つ」とが掛かる。内侍は神に舞を奉る役であるから、立って舞えないというのは職務が果たせないということで、恋の嘆きを自分の職能の言葉で述べたことになる。神に仕える身が、人ゆえに神事に立てないと言っているわけで、告白としてはかなり踏み込んでいる。
当人のいない座で名を出されて笑われている、そこへ本人の文が届く。噂話として消費されかけた恋が、一首の歌によって座の空気を変えてしまう。
しらなみ……白波。白い衣を重ねる。
しぼる……涙に濡れた袖を絞る。
きみゆゑに……あなたのために。
たち……「裁つ」と「立つ」の掛詞。
舞はれね……舞うこともできない。
内侍……神社で神に仕え、舞を奉る女性。
五条大納言……藤原邦綱。巻第六「祇園女御」に詳しい。
便女……召使いの女。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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