おりのべを一きれも得ぬ我等さへ
うす恥をかく数に入るかな
- 歌の意味
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織延の絹を一切れも得られなかった我らまでもが、薄い恥をかく者の数に入ってしまうことだ。
- 鑑賞
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巻第四 南都牒状
清盛が山門へ寄せた織延絹三千疋の分配をめぐって落書がされ、山法師の衣は薄くて恥も隠せなかった、と嘲られた。その落書に対して、絹の分配にまったくあずかれなかった衆徒が詠んだとされるのが、この一首である。本文は「また絹にも当たらぬ大衆の詠みたりけるにや」と、伝聞の形で書きとめている。
落書と、それに応じた落書。二首が並べて置かれたところで章段は転じ、興福寺から三井寺への返牒が引かれる。山門が絹で黙ったのに対し、南都は正面から清盛を弾劾した。二つの寺の態度の差が、この配置によって際立つ。
前の歌の「恥をばえこそかくさざりけれ」を受けて、「うす恥をかく」と応じている。「かく」に、恥をかくの「掻く」と、隠すの意とが響き、前歌の「かくさざりけれ」をそのまま引き取る形になっている。
論法はこうである。絹を一切れも得ていないのだから、恥の分け前もないはずだ。それなのに山法師とひとくくりに嘲られるので、絹はもらえなかったのに恥だけは平等に配られてしまった。取り分から漏れた者が、恥の取り分だけは受け取ることになる。
落書に落書で返す形は、巻第一「清水寺炎上」で焼け跡の札に翌日また札が返された先例と同じである。ただしあちらは仏法の霊験をめぐる応酬であり、こちらは絹をめぐる自嘲になっている。三年ほどのあいだに、僧たちの言葉がどこへ落ちたかがわかる。
おりのべ……織延の絹。
一きれ……一切れ。布を数える語。
我等さへ……我らまでもが。
うす恥……薄い恥。「織延」の薄さを受ける。
かく……「掻く」に「隠く」を響かせる。
数に入る……その仲間として数えられる。
衆徒……寺に属する僧の集団。
浄海……清盛の法名。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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