ふる里も恋いしくもなし旅の空
都も終のすみかならねば
- 歌の意味
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故郷も恋しくはない。旅の空にあっても同じことだ、都とて終の住みかではないのだから。
- 鑑賞
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巻第十 海道下り
池田の宿で侍従から「旅の空埴生の小屋のいぶせさに」の一首を贈られた重衡が、その場で返した歌である。
恋しいでしょうと言われて、恋しくないと答えた。もてなしを退けているのではない。都もまた終の住みかではないから、という理由を添えている。
仏教の無常観に立った答え方である。どこにいても仮の宿にすぎないなら、旅先も都も変わらない。だから恋しくない、と。理屈としては筋が通っている。
しかし重衡は、この一年前まで都に住んでいた人である。都が終の住みかでないことを、一門の都落ちによって身をもって知らされた。書物から学んだ無常ではなく、経験させられた無常が述べられている。
巻第五「奈良炎上」で東大寺興福寺を焼き、巻第八「名虎」では安楽寺で「住みなれしふるき都の恋しさは神も昔におもい知るらん」と詠んだ人である。あのとき道真に託した都への思いを、ここでは自分から断ってみせる。太宰府では恋しいと言い、東海道では恋しくないと言う。捕われの身になってからのほうが、言葉は乾いている。
ふる里……故郷。ここでは都。
恋しくもなし……恋しくもない。
旅の空……旅先。
終のすみか……最後に落ち着く住まい。
ならねば……ではないので。
無常……すべてが移り変わって定まらないこと。
梶原平三景時……重衡を護送した源氏方の武将。
仮の宿……一時的な住まい。この世を指す仏教語。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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