そるとても何かうらみんあずさ弓
ひきとどむべき心ならねば
- 歌の意味
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剃ったからといって、何を恨むことがあろうか。引きとどめられるような心ではないのだから。
- 鑑賞
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巻第十 横笛
滝口入道の歌に対する、横笛の返しである。
横笛は出家してからまもなく、奈良の法華寺で短い生涯を終えた。滝口はそれを聞いて、いよいよ道心を固めたという。
相手の「そる」「あづさ弓」をそのまま受けて返している。ただし「あづさ弓」が今度は「ひく」を導く。同じ枕詞を、別の語へ振り替えた。弓は反り、そして引かれる。二首で弓の性質を二つとも使い切っている。
「ひきとどむべき心ならねば」——引きとどめられるような心ではないのだから、である。主語をどう取るかで意味が変わる。あなたの心は引きとどめられるものではなかった、とも読めるし、私の心はもう引き返せない、とも読める。どちらにも読めるように作られている。
恨まないと言っているが、恨みがないわけではない。「何かうらみん」という反語は、恨む理由を数え上げたうえで、それでも恨まないと言う形式である。門前で追い返された者が、追い返した者に向かって、恨まないと伝える。
贈った側は「うれしき」と言い、返した側は「うらみん」と言った。感情の語を一つずつ置いて、二首は終わる。この後、二人が言葉を交わすことはない。
そるとても……剃ったとしても。
何かうらみん……何を恨むことがあろうか、いや恨まない。
あづさ弓……梓の木の弓。ここでは「引く」を導く。
ひきとどむ……引きとどめる。引き止める。
心ならねば……心ではないので。
法華寺……奈良の尼寺。
尼……出家した女性。
道心……仏道を求める心。
反語……問いの形で強く否定する言い方。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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