雲の上に見しに変らぬ月影の
すむにつけても物ぞ悲しき
- 歌の意味
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雲の上で見たのと変らない月の光が、澄んでいるにつけても、何とも悲しいことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 内侍所の都入
明石浦の月の下で帥佐殿が詠んだ、二首目である。
「雲の上」は宮中を指す。宮中で見た月と、いま明石で見ている月は、まったく同じ月である。
「すむ」に「澄む」と「住む」を掛ける。月が澄んでいることと、かつて自分が雲の上に住んでいたこととが、一語のなかで重なる。住んでいたころと変らない月が澄んでいる——二つの意味が畳み込まれている。
前の一首が月に呼びかけたのに対し、こちらは月を眺めているだけである。呼びかけても答えはない。答えのないことがわかったうえで、変らないという事実だけを述べる。二首を並べて読むと、呼びかけから諦めへ移ってゆく順序になっている。
変らないものを見ると悲しい、というのは、廃都を詠む歌の型である。巻第七で忠度が「さざ浪や志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」と詠んだのと、構造としては同じである。ただしあちらは廃墟に立つ花であり、こちらは天にかかる月で、月のほうがいっそう手が届かない。荒れた地上と変らぬ天との対比が、この一首では月一つに集約されている。
雲の上……宮中。
見しに変らぬ……以前見たのと変らない。
月影……月の光。
すむ……「澄む」に「住む」を掛ける。
につけても……それにつけても。
物ぞ悲しき……何とも悲しい。
帥佐殿……大宰帥に縁のある女房。
廃都……荒れ果てた昔の都。
歌枕……古歌に詠まれてきた土地。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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