いにしえも夢になりにし事なれば
柴のあみ戸もひさしからじな
- 歌の意味
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昔のことも夢になってしまった事であるから、この柴の編み戸の暮らしも、長くは続くまい。
- 鑑賞
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灌頂巻 女院死去
法皇を見送ったあと、女院が庵室の障子に書きつけられた二首のうちの、二首目である。
「いにしへ」は栄華の日々を指す。それが夢になった。夢とは、覚めてしまえば何も残らないものである。
その論法をそのまま延長して、いまの暮らしも同じだと言う。柴の編み戸の庵住まいも、いずれ夢のように消える。栄華が消えたのだから、その正反対にある貧しい暮らしもまた消える。無常は栄華だけを選んで壊すのではない、というわけである。
「ひさしからじな」は長くは続くまい、である。自分の死が近いことを言っているとも読める。実際、この後まもなく女院は病の床につく。
「あみ戸」に「久し」を掛け、庇(ひさし)を響かせる読み方もある。編み戸の粗末な庵に庇はない、という景と、久しくはないという意味とを重ねる読み方である。技巧としてはやや強引だが、目の前の粗末な戸を見ながら詠まれた歌であることは、そこからも伝わる。
前の一首が昔を恋しがる心を詠み、この一首が、その昔も今も夢だと言う。恋しがっておいて、恋しがる対象も自分自身も夢だと結ぶ。二首でひとまとまりの述懐になっている。
いにしへ……昔。過去。
夢になりにし……夢になってしまった。
事なれば……事であるから。
柴のあみ戸……柴を編んで作った粗末な戸。
ひさしからじな……長くは続かないだろう。
無常……すべてが移り変わって定まらないこと。
庵……草木で作った粗末な小屋。
述懐……思うところを述べること。
- 出典
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平家物語
- その他の歌
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