たぐへやる我が魂をいかにして
はかなき空にもて離るらむ
- 歌の意味
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あなたに添わせて送り出した私の魂を、どうして頼りない空の中で引き離してしまえるだろうか。
- 鑑賞
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6 はかなき空
朝忠の中将が、人の妻であった人に忍んで通っていた。女もまた思い合って過ごしていたが、その夫が人の国の守になって下ることになり、女も下ることになったので、二人とも限りなく悲しく思った。そこで女が下る日に、朝忠が詠んで遣ったのがこの歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
朝忠の中将は藤原朝忠。中納言藤原定方の子で、三十六歌仙の一人に数えられる歌人である。中将は近衛府の次官にあたる。相手の女については、人の妻であるということ以外、地の文に記載がない。
場面は女が任国へ下る当日である。夫が地方の国司に任じられたことで、女は京を離れることになり、二人の関係は物理的に断たれる。
詠出の直接の契機は、その下向の日そのものである。歌は下る女のもとへ届けられた。
段はこの一首で終わり、女の返しも、その後の二人のことも語られない。この歌は新千載集に収められている。
「たぐへやる」は、自分の魂を相手に添わせて一緒に行かせる、という意である。魂が体を離れてさまようという当時の考え方が前提にある。
送り出した以上、その魂は女とともに旅の空にある。「いかにして」はそれを受けて、どうやって、と問う形をとる。
結句の「もて離るらむ」までを合わせると、引き離せるはずがない、という反語になる。「らむ」は現在の推量で、今まさにそうしているのだろうか、と問う調子を作る。
「はかなき空」は旅路の頼りなさをいい、同時に、体を離れた魂の心もとなさにも重なる。別れの日に贈られた歌でありながら、内容は別れられないと言い切るものになっている。
中将——近衛府の次官。
人の妻——他人の妻。
人の国——地方の国。京以外の土地。
守(かみ)——国司の長官。
たぐふ(下二段動詞)——添わせる。連れ添わせる。
たましひ——魂。当時は体を離れてさまようものと考えられた。
はかなし——頼りない。あてどない。
もて離る(下二段動詞)——引き離す。引き離してしまう。
いかにして——どのようにして。どうやって。
らむ——〜しているのだろうか。現在の推量。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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