おほかたの秋のはてだに悲しきに
今日はいかでか君くらすらむ
- 歌の意味
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何ということもない普通の秋の終わりでさえ悲しいのに、今日という日をあなたはどのようにして過ごしているのだろう。
- 鑑賞
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9 秋のはて
桃園の兵部卿の宮がお亡くなりになり、その御はてが九月つごもりに営まれた。としこが、宮の北の方のもとへ「おほかたの秋のはてだに悲しきに今日はいかでか君くらすらむ」を差し上げた。北の方は限りなく悲しいと思って泣いていらしたところに、この歌が贈られたので、「あらばこそはじめもはても思ほえめ今日にも逢はで消えにしものを」を返された。段はこの二首の贈答で閉じられる。
としこは右馬允藤原千兼の妻で、大和物語に繰り返し登場する女性歌人である。三段では亭子院の御賀の支度を任され、十三段ではその死が語られる。桃園の兵部卿の宮については、桃園に住まわれた兵部卿の宮という以外、地の文に記載がない。北の方はその正妻である。
場面は宮の一周忌の日である。御はてが営まれたのは九月つごもりで、ちょうど秋の終わりにあたる。
詠出の直接の契機は、その一周忌の日が来たことである。歌は、宮の北の方のもとへ差し上げられた。
歌が届いたとき、北の方は限りなく悲しいと思って泣いていらしたと地の文は記す。北の方はこれに返しを詠み、贈答をもって段は閉じられる。
この歌は続後撰集に収められている。
「おほかたの秋のはて」は、特別なことのない、ふつうの晩秋のことである。誰にとっても物寂しい時期をまず置く。
「だに」は、〜でさえ、の意で、それだけでも悲しいのに、と続ける。そのうえに今日は一周忌が重なる、という段構えになっている。
結句の「君くらすらむ」は、あなたはどのようにして一日を過ごしているのだろう、の意である。「らむ」は目の前にない事柄についての推量で、離れた場所にいる相手の一日を思いやる形になる。
自分の悲しみは述べず、相手の一日を尋ねる形に徹している。九月つごもりという時期が、そのまま「秋のはて」として歌に取り込まれており、弔いの歌として季節の言葉が場面の日付と一致している。
兵部卿の宮——兵部省の長官を務める親王。
御はて——一周忌の法要。
北の方——貴人の正妻。
おほかた——特別なことのない、ふつうの。
秋のはて——秋の終わり。晩秋。
くらす(四段動詞)——一日を過ごす。
いかでか——どのようにして。どうして。
だに——〜でさえ。
らむ——今ごろ〜しているだろう。その場にない事柄についての推量。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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