住の江の松ならなくに久しくも
君と寝ぬ夜のなりにけるかな
- 歌の意味
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住の江の松ではないのに、あなたと共寝をしない夜が、ずいぶんと久しいものになってしまったことだ。
- 鑑賞
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11 住の江の松
故源大納言の君が、忠房のぬしの御女で東の方といった人を長年思って通っていたが、亭子院の若宮の方へ心を寄せて、通わなくなってしばらく経った。とはいえ子どももあったので言葉が絶えることはなく、二人は同じ所に住んでいた。そうしたなかで大納言が「住の江の松ならなくに久しくも君と寝ぬ夜のなりにけるかな」を詠んで贈ったところ、返しに「久しくはおもほえねども住の江の松やふたたび生ひかはるらむ」とあった。段はこの二首の贈答で閉じられる。
故源大納言の君は源清蔭。陽成天皇の皇子で、三段にも登場する。東の方は藤原忠房の娘で、東の対に住んでいたことによる呼び名である。忠房は歌人としても知られ、十三段に登場する藤原千兼の父にあたる。亭子院の若宮については、亭子院すなわち宇多天皇ゆかりの若宮という以外、地の文に記載がない。
場面は大納言と東の方が同じ所に住み続けている屋敷である。通いは絶えているが、子があるために言葉のやりとりだけは続いている。
詠出の直接の契機は、その状態がしばらく続いたことである。同じ屋敷にいながら共寝が絶えているという、この段特有の状況が歌の前提になっている。
東の方はこれに返しを詠み、贈答をもって段は閉じられる。続く十二段では、大納言がその若宮を妻として迎える経緯が語られる。
この歌は拾遺集に収められている。
住の江は摂津国の歌枕で、その松は長寿の象徴として古くから歌に詠まれてきた。ここでは「久し」を引き出すために置かれている。
「ならなくに」は、〜ではないのに、の意である。松ではないのだからそう長く保つ道理はないのに、共寝をしない夜だけが松のように久しくなってしまった、という言い方になる。
「君と寝ぬ夜のなりにけるかな」は、あなたと寝ない夜がそうなってしまった、の意。「けるかな」は気づきと詠嘆を重ねた結びで、久しくなっていたことに今さら思い当たる調子が出る。
とがめる調子はなく、自分の側から間遠になったことを、他人事のように詠嘆している。それが次の返歌で突かれることになる。
ぬし——男性に対する敬称。〜殿。
御女(むすめ)——他人の娘を敬っていう語。
東の方——屋敷の東の対に住む女性を、その方角で呼んだ言い方。
住の江——摂津国の歌枕。松の名所として知られる。
ならなくに——〜ではないのに。
久し——時間が長い。間が遠い。
寝(ぬ)——共寝をする。
けるかな——〜になってしまったことだ。気づきと詠嘆を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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