あくといへばしづ心なき春の夜の
夢とや君を夜のみは見む
- 歌の意味
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夜が明けるというので落ち着いていられない春の夜の夢——そのようなものとして、あなたを夜だけ見ることになるのだろうか。
- 鑑賞
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12 春の夜の夢
同じ大臣が、あの宮を妻として得られることになり、帝がその仲立ちをなさったのだが、まだ得られる前の初めのころ、人目を忍んで夜ごとに通っていた。その通い路の帰りぎわに詠まれたのがこの歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
同じ大臣とは、十一段に登場した源清蔭のことである。あの宮とは、前段で清蔭が心を寄せた亭子院の若宮を指す。仲立ちをなさった帝については、地の文に呼称のほかの記載がない。
場面は正式に妻として迎える前の、忍んで通っていた時期の朝方である。夜が明けるという知らせを受けて帰るところにあたる。
詠出の直接の契機は、その帰りぎわである。逢瀬が終わり、夜が明けてしまうという場面が歌を生んでいる。
段はこの一首で終わり、宮の返しも語られない。前段で東の方から離れていった相手が、こんどは新しい通い所で夜の短さを嘆いているという配置になっている。この歌は新古今集に収められている。
「あく」は夜が明けることで、明けると聞いただけで心が落ち着かなくなる、という導入である。「しづ心なき」がその落ち着かなさを言う。
そこから「春の夜の夢」とつなぎ、短くてあっけない春の夜の夢に、この逢瀬そのものを重ねる。春の夜の夢は、はかないもののたとえとして用いられる言い方である。
「夢とや君を」の「や」は疑問で、そういうものとしてあなたを見ることになるのか、と問う。結句の「夜のみは見む」の「のみ」が限定を加え、昼に堂々と逢えないつらさを示す。
夢という語を、はかなさと、確かでない頼りなさの両方に働かせている点が中心にある。
おとど——大臣。ここでは源大納言を指す。
あはす(下二段動詞)——縁組みをさせる。仲立ちをする。
あく(下二段動詞)——夜が明ける。
しづ心——落ち着いた心。静かな心。
春の夜の夢——短くはかないもののたとえ。
〜とや〜む——〜とでもいうのだろうか。
のみ——〜だけ。限定を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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