たもとともしのばざらまし秋風に
なびく尾花のおどろかさずは
- 歌の意味
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袂だとして思い出しもしなかっただろう。秋風になびく尾花が驚かせなかったなら。
- 鑑賞
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17 なびく尾花
故式部卿宮に仕えていた出羽の御のもとに、継父の少将が通っていたが、やがて離れてしまった。その後、女がすすきに文をつけて贈ってきたので、少将が「秋風になびく尾花は昔見したもとに似てぞ恋しかりける」と言ってやったところ、女の返しに「たもとともしのばざらまし秋風になびく尾花のおどろかさずは」とあった。段はこの二首の贈答で閉じられる。
故式部卿宮は式部省の長官を務めた親王で、続く十八段から二十段にも登場する。出羽の御はその宮に仕えた女房で、出羽にちなむ呼び名を持つ。継父の少将は前の十六段にも現れた人物で、そこでは陽成院の典侍の御と歌をやりとりしている。
場面は同じ秋、少将から返歌が届いたあとである。
詠出の直接の契機は、少将から届いた「秋風になびく尾花は昔見したもとに似てぞ恋しかりける」である。恋しいと言ってきた相手に応じている。
この返歌をもって十七段は閉じられる。すすきを贈ったのは女の側であったことが、ここで効いてくる仕掛けになっている。
「〜ずは……まし」は、もし〜でなかったら……だっただろう、という事実に反する仮定の言い方である。
すすきが驚かせなかったなら、あなたは袂のことなど思い出しもしなかったはずだ、というのが歌の全体になる。「おどろかす」は、はっと気づかせる、思い出させる、の意である。
相手が「恋しかりける」と言ったその感情の出どころを、自分の贈り物に引き戻してしまう。恨みを述べる代わりに、相手の言葉の成り立ちそのものを指摘してみせる返し方である。
結句を「おどろかさずは」と倒置で置き、仮定の条件を最後に回している。上から読むと否定だけが先に立ち、最後に理由が明かされる運びになる。
しのぶ(四段動詞)——思い慕う。懐かしく思い出す。
〜ざらまし——〜しなかっただろう。
おどろかす(四段動詞)——はっと気づかせる。思い出させる。
〜ずは——〜しなかったならば。仮定を表す。
尾花(をばな)——すすきの穂。
まし——事実に反する仮定の帰結を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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