ふるさとと荒れにし宿の草の葉も
君がためとぞまづは摘みける
- 歌の意味
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旧い里として荒れ果ててしまったこの家の草の葉も、あなたのためと思って、まず摘んだのだ。
- 鑑賞
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18 草の葉
故式部卿宮が二条の御息所のもとへお通いにならなくなり、その翌年の正月七日の日、御息所が若菜を差し上げなさったときに詠まれたのが、この歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
故式部卿宮は式部省の長官を務めた親王で、前の十七段にも故式部卿宮として現れ、続く十九段と二十段にも登場する。二条の御息所については、二条にちなむ呼び名を持つ御息所という以外、地の文に記載がない。
場面は通いが絶えてからの翌年、正月七日である。この日は若菜を摘んで食べ、また贈る習わしがあった。
詠出の直接の契機は、その若菜を宮のもとへ差し上げたことである。歌はその若菜に添えられた。
段はこの一首で終わり、宮の返しは語られない。続く十九段では、同じ二人のやりとりが秋の場面として語られる。
「ふるさと」は、人の訪れが絶えて荒れた旧い住まいのことで、その荒れようをまず述べておく。「荒れにし宿」がそれを受ける。
荒れた家に生える草は本来つまらないものである。その草でさえ、と「草の葉も」の「も」が受け、下の「君がためとぞ」へつなぐ。
「まづは摘みける」の「まづは」は、まず第一に、の意で、他の誰よりも先に、という含みを担う。「ぞ」の係りが「ける」で結ばれ、あなたのためにこそ摘んだのだ、と押さえる。
恨み言を並べず、若菜という贈り物と歌一首だけで訴えを成り立たせている。
式部卿宮——式部省の長官を務める親王。
御息所(みやすんどころ)——天皇や皇太子の寵を受けた女性の呼び名。
絶ゆ(下二段動詞)——男女の通いが途絶える。
若菜——正月に摘んで食べる春の若い菜。無病息災を願う習わし。
ふるさと——人が訪れなくなって荒れた旧い住まい。
宿(やど)——住まい。家。
まづは——まず第一に。何よりも先に。
ぞ〜ける——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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