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ひぐらしに君まつ山のほととぎす
とはぬ時にぞ声もおしまぬ

歌の意味
一日中あなたを待つ、その待つ山のほととぎすは、訪れのないときにこそ声を惜しまず鳴くのだ。
鑑賞
24 君まつ山

 先の帝の御時に、右大臣の御女が上の御局に参上して控えていた。帝がおいでになるかと心待ちにしていたが、おいでにならなかったので、この歌を詠んだ。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
 右大臣の御女は、右大臣を父に持つ女性である。先の帝については、先代の帝という呼称のほか、地の文に記載がない。
 場面は宮中の上の御局である。上の御局は、帝の御座所に近い、女房が控えるための部屋にあたる。
 詠出の直接の契機は、待っていた帝がおいでにならなかったことである。参上して控えていたその場で詠まれている。
 段はこの一首で終わり、帝の反応も後日のことも語られない。

 「ひぐらし」は、一日中、日の暮れるまで、の意である。日暮れという時刻ではなく、朝から晩までという長さを言う。
 「君まつ山」の「まつ」に、あなたを待つという意と、松の木という意とが掛けられている。「まつ山」で待つ山となり、そこにほととぎすが鳴く景色が立ち上がる。
 「とはぬ時にぞ」の「とふ」は訪れることで、訪れのないときにこそ、と限定する。「ぞ」の係りが結句の「おしまぬ」で結ばれている。
 ほととぎすが声を惜しまず鳴くのは、待つ者が声を惜しまず泣くことに重ねられている。待ちぼうけの嘆きを、鳥の声一つに託した一首である。

先の帝——先代の帝。
上の御局(うへのみつぼね)——帝の御座所に近い、女房が控える部屋。
さぶらふ(四段動詞)——お仕えする。伺候する。
ひぐらし——一日中。日の暮れるまで。
まつ——「待つ」と「松」との掛詞。
ほととぎす——夏に鳴く鳥。その声は古来歌に詠まれた。
とふ(四段動詞)——訪れる。訪問する。
おしむ(四段動詞)——出し惜しみする。
ぞ〜ぬ——係り結び。強調を表す。
出典
大和物語
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