それをだに思ふこととてわが宿を
見きとないひそ人の聞かくに
- 歌の意味
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せめてそれだけでも私を思ってくれることとして、私の家を見たとは言わないでほしい。人が聞くのだから。
- 鑑賞
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26 わが宿を見きとないひそ
桂の皇女が、たいそう人目を忍んで、逢ってはならない人に逢っておられた。そのとき、男のもとへ詠んで贈られたのがこの歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
桂の皇女は桂に住まわれた皇女で、二十段でも故式部卿宮を慕う歌を詠んでいる。相手の男については、逢ってはならない人という以外、地の文に記載がない。
場面は忍び逢いのあとである。人目を避けて逢っていたため、それが知られることを恐れる立場に置かれている。
詠出の直接の契機は、その忍び逢いそのものである。歌は逢った相手の男のもとへ贈られた。
段はこの一首で終わり、男の返しは語られない。この歌は古今集に収められている。
「それをだに」の「だに」は、せめて〜だけでも、の意である。多くを望まないという前置きから始まる。
「思ふこととて」は、私を思ってくれることとして、の意で、口をつぐむことそのものを、愛情の証として求めている。
「わが宿を見きとないひそ」の「な〜そ」は禁止の言い方で、私の家を見たと言うな、と頼む。逢ったとは言わず、家を見たとも言うな、と一段手前で止めているのが特徴である。
結句の「人の聞かくに」が理由を示し、人が聞くのだから、と結ぶ。恋の情を述べるのではなく、口止めだけを内容とする一首で、身分ある女の忍び逢いという立場がそのまま歌の中身になっている。
桂の皇女——桂に住まわれた皇女。
みそかなり(形容動詞)——人目を忍んでいる。ひそかである。
あふまじき人——逢ってはならない人。
だに——せめて〜だけでも。
とて——〜として。〜ということで。
宿(やど)——住まい。家。
な〜そ——〜するな。禁止を表す。
聞かく——「聞く」の名詞形。聞くこと。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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