立ち寄らむ木のもともなきつたの身は
ときはながらに秋ぞかなしき
- 歌の意味
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寄りかかるべき木の根もとさえない蔦のようなこの身は、常緑のままであるだけに、秋が悲しい。
- 鑑賞
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33 つたの身
凡河内躬恒が、亭子の院に詠んで奉った歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
凡河内躬恒は古今集の撰者の一人に名を連ねる歌人で、三十六歌仙にも数えられる。亭子の院は宇多天皇のことで、一段と二段、また前の三十二段にも登場する。
場面は亭子の院のもとである。歌に秋が詠まれていることから、秋のことと知れる。
詠出の直接の契機は地の文に記されない。前の三十二段で源宗于が昇進を願って歌を奉ったのに続く配置で、同じく身の上を訴える歌として置かれている。
段はこの一首で終わり、帝の反応も後日のことも語られない。
「立ち寄らむ木のもと」は、寄りかかるべき木の根もとのことである。蔦は木に絡んで伸びるものだから、寄る木がなければ立つこともできない。頼るべき人がないことを、その姿に重ねている。
「つたの身」の「つた」には、蔦と、拙いという意とが響く。取るに足らない自分を言う形になる。
「ときはながら」は、常緑のまま、の意である。他の草木が秋に色づくなかで、自分だけはいつまでも色が変わらない。位が上がれば袍の色が変わるという当時の制度が、この一語の背景にある。
結句の「秋ぞかなしき」は「ぞ」の係りが「かなしき」で結ばれる形である。秋が悲しいのは、周りが色づくのに自分だけが変わらないからで、色づかないことをもって昇進のないことを述べている。
凡河内躬恒(おほしかふちのみつね)——古今集の撰者の一人に名を連ねる歌人。
亭子の院——宇多天皇のこと。
奉る(四段動詞)——差し上げる。献上する。
木のもと——木の根もと。
つた——蔦。「拙し」の意を響かせる。
ときは——常緑であること。いつも変わらないこと。
ながら——〜のままで。
ぞ〜き——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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