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くれ竹のよよのみやこと聞くからに
君はちとせのうたがひもなし

歌の意味
呉竹の節々のように代々の都と聞くだけで、あなたが千年栄えることに疑いもない。
鑑賞
36 よよのみやこ

 伊勢の国に前の斎宮がおいでになったときに、堤の中納言が宮中の使いとして参上して詠んだ歌である。返しは伝わっていない。ただ、この斎宮のいらっしゃった所は多気の地にあり、たけのみやこと言われていたものである、と地の文は結んでいる。
 堤の中納言は藤原兼輔。中納言に至り、賀茂川の堤のあたりに邸があったことによる呼び名である。三十六歌仙の一人に数えられ、前の三十五段でも宮中の使いとして大内山に参上している。前の斎宮は、伊勢神宮に仕えた斎宮の任を退いた方をいう。
 場面は伊勢の国、斎宮のおられた多気の地である。その地は、たけのみやこと呼ばれていたと地の文は説明する。
 詠出の直接の契機は、宮中の使いとして斎宮のもとへ参上したことである。
 地の文は、返しは知らない、と記す。段はその一文と、多気という地名の説明で閉じられる。この歌は新勅撰集に収められている。

 「くれ竹の」は「よ」にかかる枕詞である。竹の節と節のあいだを「よ」というところから、次の「よよ」を導く。
 「よよのみやこ」は代々の都、の意である。地名の多気が「たけ」と読まれ、竹の縁で呉竹が呼び込まれている。地名を枕詞に結びつける仕立てになっている。
 「聞くからに」は、聞くとすぐに、聞いただけで、の意である。実際に見たのではなく、そう呼ばれていると聞いただけで、と限定する。
 結句の「ちとせのうたがひもなし」は、千年の栄えに疑いもない、と言い切る形である。竹の節が幾重にも重なる姿から、代々続くこと、さらに千年へと、長さの観念を積み上げていく組み立てになっている。訪問先を言祝ぐ挨拶の歌にあたる。

伊勢の国——現在の三重県の大部分にあたる。
斎宮(さいぐう)——伊勢神宮に仕えた未婚の内親王
女王。
御使ひ——宮中からの使者。
くれ竹の——「よ」にかかる枕詞。呉竹の節から。
よよ——代々。世々。竹の節の意を掛ける。
みやこ——都。
からに——〜するとすぐに。〜だけで。
ちとせ——千年。
出典
大和物語
その他の歌