白露のおきふし誰を恋ひつらむ
われは聞きおはずいそのかみにて
- 歌の意味
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白露の置くなか、起きては伏して誰を恋うていたのでしょう。私は自分のこととは聞きません。古びた身ですから。
- 鑑賞
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46 いそのかみ
平中が、閑院の御との仲がしばらく絶えたのち、久しぶりに逢った。その後、詠んで贈るには「うちとけて君は寝つらむわれはしも露のおきゐて恋にあかしつ」とあった。女の返しに「白露のおきふし誰を恋ひつらむわれは聞きおはずいそのかみにて」とあった。以上が段の全体である。
平中は平定文のこと。色好みで知られた人物で、百三段にも登場する。閑院の御については、閑院にちなむ呼び名を持つ女性という以外、地の文に記載がない。
場面は同じく、平中から歌が届いたあとである。
詠出の直接の契機は、平中から届いた「うちとけて君は寝つらむわれはしも露のおきゐて恋にあかしつ」である。眠れず恋に明かしたという訴えに応じている。
この返歌をもって四十六段は閉じられる。地の文には歌の評もなく、贈答二首だけで段が成り立っている。
「白露のおきふし」は、相手が使った「おき」をそのまま受け取り、「起き伏し」すなわち起きたり寝たりして、という意に転じている。露の縁を残したまま、日々の暮らしを言う語に変えている。
「誰を恋ひつらむ」は、誰を恋うていたのでしょう、という問いである。自分のことではないだろう、という当てこすりになる。
「われは聞きおはず」の「聞きおふ」は、自分のこととして聞く、という意である。あなたの恋の相手が私だとは受け取りません、と言う。
結句の「いそのかみにて」の「いそのかみ」は「古る」にかかる枕詞として用いられ、古びた、年経た、の意を導く。自分はもう古い女ですから、と身を引いてみせることで、相手の言葉を受け流している。贈られた歌の語を借りて意味をずらす返し方で、この作品の贈答歌によく見られる型である。
白露——白く光る露。
おきふし——起きたり寝たりして。日常の暮らしをいう。
恋ふ(上二段動詞)——恋い慕う。
聞きおふ(四段動詞)——自分のこととして聞く。
いそのかみ——「古る」にかかる枕詞。古びた、年経た意を導く。
つらむ——〜たのだろう。過去の推量。
にて——〜であって。〜なので。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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