おく山に心を入れてたづねずは
深き紅葉の色を見ましや
- 歌の意味
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奥山まで心を尽くして訪ねていかなければ、深く色づいた紅葉の色を見ることができただろうか。
- 鑑賞
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47 深き紅葉
一条の君が詠んだ歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
一条の君は、三十八段にも同じ呼び名で登場する。そこでは先の帝の五の皇子の御女とされ、京極の御息所のもとに仕えたのち、壱岐の守の妻として都を去っている。ただしこの段では、その人物との関係について地の文は何も述べていない。
場面の時期や場所は明示されない。歌に紅葉が詠まれていることから、秋のことと知れる。
詠出の直接の契機は地の文に記されない。歌一首だけが置かれた、この作品でも短い部類の段である。
段はこの一首で終わり、聞き手の反応も後日のことも語られない。
「おく山に心を入れてたづねずは」は、奥山まで心を尽くして訪ねていかなければ、の意である。「心を入れて」は、身を入れて、一途に、という意になる。
「ずは〜まし」は事実に反する仮定の言い方で、訪ねなかったならば、という条件を立てる。
「深き紅葉の色」の「深き」は、色の濃さであると同時に、山の奥深さをも受けている。初句の「おく山」と呼応する語である。
結句の「見ましや」は反語で、見られただろうか、いや見られなかった、と言う。労を惜しまず出向いたからこそ得られた、という筋になる。紅葉を述べる形をとりながら、努めなければ得られないものについての一般的な言い分としても読める一首である。
一条の君——一条にちなむ呼び名を持つ女性。
おく山——山の奥深い所。
心を入る——身を入れる。一途に打ち込む。
たづぬ(下二段動詞)——訪ねる。訪れる。
ずは〜まし——もし〜しなかったならば〜だろうに。事実に反する仮定。
深し——色が濃い。また、奥深い。
ましや——〜だろうか、いや〜ない。反語を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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