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花の色を見ても知りなむはつ霜の
心わきてはおかじとぞ思ふ

歌の意味
花の色を見ればきっと分かるだろう。初霜が心を分け隔てて置くことはあるまいと思う。
鑑賞
51 おなじえ

 斎院から帝に「おなじえをわきてしもおく秋なれば光もつらくおもほゆるかな」と差し上げた。帝の返しに「花の色を見ても知りなむはつ霜の心わきてはおかじとぞ思ふ」とあった。以上が段の全体である。
 斎院は賀茂の社に仕えた未婚の内親王
女王をいう。前の四十九段では帝の御女が斎院としてその任にあり、菊をめぐる贈答が置かれている。帝はその同じ帝である。
 場面は帝のもとである。斎院から歌が届けられたところにあたる。
 詠出の直接の契機は、斎院から届いた「おなじえをわきてしもおく秋なれば光もつらくおもほゆるかな」である。分け隔てを恨む訴えに応じている。
 この返歌をもって五十一段は閉じられる。地の文には歌の評もなく、贈答二首だけで段が成り立っている。

 「花の色を見ても知りなむ」は、花の色を見ればきっと分かるだろう、の意である。相手が霜の置き方を言ったのに対し、季節が巡って花が咲くときのことを持ち出す。
 「はつ霜の心わきてはおかじ」は、初霜が心を分け隔てて置くことはあるまい、の意である。「じ」は打消の推量で、そんなことはあるまい、と否定する。
 相手の使った「わきて」と「おく」をそのまま受け取り、その意味を打ち消す形にしている。贈られた歌の語を借りて理屈で切り返す型で、十六段や二十一段の贈答と同じ構えにあたる。
 結句の「とぞ思ふ」は「ぞ」の係りが「思ふ」で結ばれる形で、そう思う、という判断を押し出す。分け隔てはしていないと言い切りながら、その証しを花の咲く春に預けている点に、この返しの運びがある。

花の色——花の色あい。
知りなむ——きっと分かるだろう。
はつ霜——その年に初めて降りる霜。
わく(下二段動詞)——分け隔てる。区別する。
おかじ——置くまい。「じ」は打消の推量。
ぞ〜思ふ——係り結び。強調を表す。
出典
大和物語
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