いま来むといひて別れし人なれば
かぎりと聞けどなほぞ待たるる
- 歌の意味
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今すぐ帰ってくると言って別れた人なので、これが最後だと聞いても、やはり待たれてしまう。
- 鑑賞
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55 なほぞ待たるる
ある男が、恋する女を残してよその国へ行ったので、いつ戻ってくるかと待っていたところ、男は死んだというので、女が詠んだ歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
男女いずれについても、地の文は名も身分も記していない。前の五十四段が都を離れて帰らないと詠む男の歌であり、この段は残された女の側から詠まれた歌が置かれる配置になっている。
場面の時期や場所は明示されない。示されているのは、男が去り、その死の知らせが届いたという経緯だけである。
詠出の直接の契機は、男が死んだという知らせである。
段はこの一首で終わり、その後のことは語られない。この歌は続後拾遺集に収められている。
「いま来むといひて別れし人」は、今すぐ帰ってくると言って別れた人、の意である。別れぎわの言葉をそのまま初句に置いている。
「なれば」は、〜であるので、と理由を示す。そう言った人だから、という筋が下へつながる。
「かぎりと聞けど」の「かぎり」は、命の最後、の意である。「けど」の逆接が、そう聞いたけれども、と続ける。死を直接には言わず、限りという語で置き換えている。
結句の「なほぞ待たるる」の「るる」は自発で、待とうと思わなくても自然に待ってしまう、という働きになる。「ぞ」の係りが「るる」で結ばれている。死んだと知りながら待ってしまうという、意志では止められない心の動きを、この一語が担っている。
いま来む——今すぐ帰ってこよう。
なれば——〜であるので。理由を表す。
かぎり——命の最後。臨終。
けど——〜けれども。逆接を表す。
なほ(副詞)——それでもやはり。
る——自発を表す助動詞。自然と〜してしまう。
ぞ〜るる——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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