忘るやといでてこしかどいづくにも
うさははなれぬものにぞありける
- 歌の意味
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忘れられるかと思って出てきたけれど、どこにいても憂さは離れないものであった。
- 鑑賞
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59 うさ
世の中がいやになって筑紫へ下った人が、女のもとへ詠んで寄こした歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
詠み手については、世の中がいやになって筑紫へ下った人という以外、地の文に記載がない。相手の女についても同様である。
場面は筑紫、すなわち九州である。都を離れて下った先にあたる。
詠出の直接の契機は、都を離れてもなお憂さが離れなかったことである。歌は都に残る女のもとへ寄こされた。
段はこの一首で終わり、女の返しも後日のことも語られない。
「忘るやと」は、忘れられるかと思って、の意である。都を離れれば忘れられるだろうという見込みが、初句に置かれる。
「いでてこしかど」の「かど」が逆接で、出てきたけれども、と下へつなぐ。見込みが外れたことが、ここで告げられる。
「うさ」に、憂さと、筑紫にある地名の宇佐とが掛かる。どこにいても憂さは離れないと言いながら、その下ったさきが宇佐であるという皮肉になる。
結句の「はなれぬものにぞありける」は「ぞ」の係りが「ける」で結ばれる形で、そういうものであった、という気づきを示す。場所を変えれば心も変わるという期待が裏切られたことを、地名一つに託して述べた一首である。
世の中——男女の仲。また、世間。
うし——つらい。いやだ。
筑紫(つくし)——九州の古称。
うさ——「憂さ」と、筑紫の地名「宇佐」との掛詞。
いづくにも——どこにいても。
はなる(下二段動詞)——離れる。遠ざかる。
ぞ〜ける——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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