さ夜ふけていなおほせ鳥のなきけるを
君がたたくと思ひけるかな
- 歌の意味
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夜が更けて、いなおほせ鳥が鳴いていたのを、あなたが戸を叩くのだと思ってしまったことだ。
- 鑑賞
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66 いなおほせ鳥
のちに藤原千兼の妻となるとしこが、千兼を待っていた夜、千兼が来なかったので詠んだ歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
としこは藤原千兼の妻で、三段では亭子院の御賀の支度を任され、九段では弔いの歌を詠み、十三段ではその死が語られる。四十一段では源大納言の屋敷に集まる四人の一人として登場する。藤原千兼は右馬允を務めた人である。
場面は夜更けのとしこの家である。千兼を待っていたが、来なかった。
詠出の直接の契機は、その待ちぼうけである。夜更けに鳥の声を聞いたことが歌を生んでいる。
段はこの一首で終わり、千兼の反応も後日のことも語られない。続く六十七段でも、同じ二人の話が語られる。
「さ夜ふけて」は、夜が更けて、の意である。「さ」は語調を整える接頭語である。
「いなおほせ鳥」は、稲を負わせる鳥の意とされる鳥の名で、古今伝授の三鳥の一つに数えられ、何の鳥を指すかは古くから定説がない。ここでは夜に鳴く鳥として詠まれている。
「なきけるを」の「を」が逆接で、鳴いていたのに、と下へつなぐ。
結句の「君がたたくと思ひけるかな」は、あなたが戸を叩くのだと思ってしまったことだ、という詠嘆である。鳥の声を戸を叩く音と聞き違えた、という一点だけを述べている。待つ心の強さを訴えるかわりに、聞き違いという事実だけを差し出す形になっている。
としこ——藤原千兼の妻。大和物語にたびたび登場する。
藤原千兼——右馬允を務めた人。
さ夜——夜。「さ」は語調を整える接頭語。
ふく(下二段動詞)——夜が更ける。
いなおほせ鳥——鳥の名。何の鳥を指すか定説がない。
なく(四段動詞)——鳥が鳴く。
たたく(四段動詞)——戸を叩く。訪れの合図。
けるかな——〜てしまったことだなあ。詠嘆を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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