君を思ふひまなき宿と思へども
こよひの雨はもらぬ間ぞなき
- 歌の意味
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あなたを思う隙間もない家だと思っていたけれど、今宵の雨は漏らないところがない。
- 鑑賞
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67 ひまなき宿
そのとしこが、雨の降る夜に千兼を待っていたが、雨のせいか来られなかった。としこの家は粗末な家で雨漏りがひどいところなので、雨のせいで行けないが、そんなところでどのように過ごしておいでか、と千兼が言ってきたので、としこが詠んだのがこの歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
としこは藤原千兼の妻で、前の六十六段でも千兼を待つ歌を詠んでいる。千兼は右馬允を務めた人である。
場面は雨の降る夜、としこの家である。粗末な家で雨漏りがひどいと地の文は記す。
詠出の直接の契機は、千兼から届いた、そんなところでどのように過ごしているのか、という問いである。
段はこの一首で終わり、千兼の反応も後日のことも語られない。
「ひまなき宿」の「ひま」は、隙間の意である。あなたを思う気持ちで隙間もない家、という言い方から始まる。
「思へども」の逆接が、そう思っていたけれど、と下へつなぐ。思いで満ちているはずの家が、実際には隙間だらけであったことが、ここで明かされる。
「もらぬ間ぞなき」は、漏らないところがない、の意である。二重の打消で、家じゅうが漏っていることを言う。「ぞ」の係りが「なき」で結ばれている。
「もる」は雨が漏ることをいうと同時に、涙がこぼれることにも重なる。雨漏りのひどさを訴えているようでいて、来ない相手を思って涙の乾く間もないと述べていることになる。粗末な家という現実の条件を、そのまま歌の材料にした一首である。
ひま——隙間。すきま。
宿(やど)——住まい。家。
思へども——思っていたけれども。逆接を表す。
こよひ——今夜。
もる(四段動詞)——雨が漏る。また、涙がこぼれる。
間(ま)——場所。すきま。
ぞ〜なき——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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