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わが宿をいつかは君がならし葉の
ならし顔には折りにおこする

歌の意味
私の家を、あなたがいつ慣れ親しんだというので、ならし葉の名のとおり慣れ顔で、枝を折りに寄こすのでしょうか。
鑑賞
68 葉守の神

 枇杷殿が、としこの家に柏木が植えてあるのを、枝を折らせてほしいと使いを寄こしたので、枝を折らせて歌を書きつけ、それを添えて贈るには「わが宿をいつかは君がならし葉のならし顔には折りにおこする」とあった。すると枇杷殿の返しに「かしは木に葉守の神のましけるをしらでぞ折りしたたりなさるな」とあった。以上が段の全体である。
 枇杷殿は藤原仲平。枇杷殿と呼ばれた邸に住んでいたことによる呼び名である。としこは藤原千兼の妻で、六十六段と六十七段にも登場する。柏木は葉守の神が宿るとされた木である。
 場面はとしこの家である。庭に柏木が植えられている。
 詠出の直接の契機は、枇杷殿から、枝を折らせてほしいという使いが来たことである。としこは枝を折らせ、この歌を書きつけて添えた。
 枇杷殿はこれに返しを詠み、贈答をもって段は閉じられる。この歌は後撰集に収められている。

 「いつかは君が」は、いつあなたが、の意である。反語の調子を含み、そんな覚えはないはずだ、と匂わせる。
 「ならし葉」は楢の葉のことで、「ならし」の音から次の「ならし顔」を導く。同じ音を重ねて畳みかける作りになっている。
 「ならし顔」は、慣れ親しんだ顔つき、馴れ馴れしい様子をいう。頼み事をしてくる相手の遠慮のなさを、この一語で突いている。
 結句の「折りにおこする」は、折りに寄こす、の意である。求めに応じて枝は渡しながら、その求め方をとがめる形になっている。断らずに応じたうえで一言添えるという運びで、贈り物と歌が一つに働く形は三段の柳の枝と同じである。

枇杷殿(びはどの)——藤原仲平のこと。枇杷殿に住んでいたことによる呼び名。
柏木(かしはぎ)——葉守の神が宿るとされた木。
ならし葉——楢の葉。「ならし顔」を導く。
ならし顔——慣れ親しんだ顔つき。馴れ馴れしい様子。
いつかは——いつ〜か。反語の調子を含む。
おこす(下二段動詞)——寄こす。よこす。
宿(やど)——住まい。家。
出典
大和物語
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