別るべきこともあるものをひねもすに
待つとてさへも嘆きつるかな
- 歌の意味
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別れねばならぬことさえあるというのに、一日中こうして待つことまでも嘆かなければならないとは。
- 鑑賞
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73 待つとてさへも
地方の国守として赴任する人に、堤の中納言が馬のはなむけを用意して待っていたが、日が暮れるまで来ないので詠んでやったのがこの歌である。歌が届くと、相手は慌てふためいてやってきた。段はその一文で閉じられる。
堤の中納言は藤原兼輔。三十六歌仙の一人に数えられ、前の七十一段では式部卿の宮を悼む歌を詠んでいる。赴任する人については、地方の国守として下る人という以外、地の文に記載がない。
場面は兼輔の屋敷である。餞別の宴の支度を整えて相手を待っていたが、日が暮れても来ない。
詠出の直接の契機は、その待ちぼうけである。歌は来ない相手のもとへ遣わされた。
歌を受け取った相手は慌ててやってきた。歌一首が人を動かした形で段が締めくくられている。
「別るべきこともあるものを」は、別れねばならないことさえあるのに、の意である。「ものを」が詠嘆を含む逆接で、それだけでも嘆かわしいのに、と下へつなぐ。
「ひねもすに」は、一日中、朝から晩まで、の意である。待たされた時間の長さを示す。
「待つとてさへも」の「さへ」は添加を表し、別れの嘆きの上に、待つ嘆きまで重なることを言う。嘆きが二重になっている構えである。
結句の「嘆きつるかな」は詠嘆で終わる。餞別のために待っている側が、その待ち時間そのものを嘆いてみせる形で、催促の歌でありながら、責める語は一つも使っていない。相手が慌ててやってきたのは、この言い方が効いたということである。
国守(くにのかみ)——地方の国司の長官。
馬のはなむけ——旅立つ人に贈る餞別。送別の宴。
別るべし——別れねばならない。
ものを——〜であるのに。詠嘆を含む逆接。
ひねもす(副詞)——一日中。朝から晩まで。
とて——〜ということで。〜として。
さへ——〜までも。添加を表す。
つるかな——〜てしまったことだなあ。詠嘆を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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