うちつけにまどふ心と聞くからに
なぐさめやすくおぼほゆるかな
- 歌の意味
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出し抜けに惑う心だと聞くだけで、慰めるのもたやすいことに思われることだ。
- 鑑賞
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78 まどふ心
監の命婦が元旦の儀式に出られたとき、弾正の親王が一目惚れして手紙を送ったので、その返しに詠んだのがこの歌である。親王の返歌は今は忘れてしまった、と地の文は結ぶ。
監の命婦は大和物語に繰り返し登場する女房で、八段では中務の宮と、十段では旧居の前で、二十一段と二十二段では良少将と歌をやりとりし、六十九段と七十段では藤原忠文の子との別れが語られる。弾正の親王は弾正台の長官を務めた親王である。
場面は元旦の儀式の場である。そこで親王が命婦を見初めた。
詠出の直接の契機は、その親王から届いた手紙である。歌はその返しとして詠まれた。
親王も返しを詠んだが、その歌は忘れられてしまったと地の文は記す。歌が伝わり残るかどうかで出来を測る書き方である。この歌は新千載集に収められている。
「うちつけに」は、出し抜けに、突然に、の意である。一目惚れという相手の言い分を、その唐突さの側から捉え直している。
「まどふ心と聞くからに」は、惑う心だと聞くだけで、の意である。「からに」が、聞いただけですぐに、という即座の反応を示す。
「なぐさめやすく」は、慰めるのがたやすい、の意である。急に生じた心なら、鎮めるのもたやすかろう、という理屈になる。
結句の「おぼほゆるかな」は詠嘆で終わる。相手の思いの深さを認めず、その軽さを突く返し方であり、拒むとも受けるとも言わずに、相手の言い分の成り立ちだけを指摘している。続く七十九段でも、同じ親王に対して同じ調子の歌が贈られる。
監の命婦(げんのみやうぶ)——宮中に仕える女官。
元旦の儀式——正月一日に行われる朝廷の儀式。
弾正の親王——弾正台の長官を務める親王。
うちつけなり(形容動詞)——出し抜けである。突然である。
まどふ(四段動詞)——惑う。心が乱れる。
からに——〜するとすぐに。〜だけで。
なぐさむ(下二段動詞)——心を慰める。鎮める。
おぼほゆ(下二段動詞)——自然と思われる。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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