こりずまの浦にかづかむうきみるは
浪さわがしくありこそはせめ
- 歌の意味
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懲りずまの浦に潜って取ろうという浮き海松は、波が騒がしくあることでしょう。
- 鑑賞
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79 こりずまの浦
これも弾正の親王に、監の命婦が詠んだ歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
監の命婦と弾正の親王は、前の七十八段に登場した同じ二人である。七十八段では、親王が元旦の儀式で一目惚れして手紙を送り、命婦がその軽さを突く歌を返している。
場面の時期や場所は明示されない。示されているのは、同じ親王に贈った歌であるということだけである。
詠出の直接の契機は地の文に記されない。前段からの流れとして、親王が重ねて手紙を寄こしたことに応じたものと読める配置になっている。
段はこの一首で終わり、親王の反応も後日のことも語られない。
「こりずま」に、懲りないという意の「懲りず」と、地名の須磨とが掛かる。懲りずに言い寄る相手を、地名の中に読み込んでいる。
「かづかむ」は、水に潜って取ろうとする、の意である。「うきみる」の「みる」は海松という海藻の名で、そこに「見る」の意が重なる。「うき」も、水に浮くことと、憂いとが掛かる。海に浮かぶ海松と、憂き目を見ることとが、この一語で一つになる。
「浪さわがしく」は、波が騒がしい、の意である。実際の波と、人の噂の立つこととが重なる。
結句の「ありこそはせめ」は、あることでしょう、と抑えて結ぶ。浦、潜く、浮き海松、浪と、海の語で一貫させながら、懲りずに手紙を寄こせば憂き目を見るうえに噂も立ちますよ、とたしなめている。前段と同じく、拒むとも受けるとも言わない返し方である。
こりずま——「懲りず」と地名「須磨」との掛詞。
須磨(すま)——摂津の国の歌枕。
かづく(四段動詞)——水に潜る。水をかぶる。
うきみる——「浮き海松」と「憂き見る」との掛詞。
海松(みる)——海藻の名。
浪(なみ)——波。また、人の噂のたとえ。
さわがし——騒がしい。落ち着かない。
こそ〜め——係り結び。強調を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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