恋しさに死ぬるいのちを思ひいでて
問ふ人あらばなしとこたへよ
- 歌の意味
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恋しさのために死んでしまったこの命を思い出して、尋ねる人があったなら、もういないと答えてください。
- 鑑賞
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104 消えばともに
藤原滋幹の少将に、ある女が「恋しさに死ぬるいのちを思ひいでて問ふ人あらばなしとこたへよ」と詠み贈った。少将の返しに「からにだにわれ来たりてへ露の身の消えばともにと契りおきてき」とあった。以上が段の全体である。
藤原滋幹は少将を務めた人である。相手の女については、地の文に記載がない。
場面の時期や場所は明示されない。示されているのは、女から少将へ歌が贈られたということだけである。
詠出の直接の契機は地の文に記されない。
少将はこれに返しを詠み、贈答をもって段は閉じられる。この歌は新古今集に収められている。
「恋しさに死ぬるいのち」は、恋しさのために死んでしまう命、の意である。恋のために死ぬという言い方は当時よく用いられた。
「思ひいでて」は、思い出して、の意である。自分が死んだあと、誰かが自分を思い出すという場面を先に立てている。
「問ふ人あらば」は、尋ねる人があったなら、という仮定である。自分の消息を尋ねる者が現れるかどうかも分からない、という含みを持つ。
結句の「なしとこたへよ」は、もういないと答えよ、という命令である。自分で告げるのではなく、相手に伝言を託す形をとる。三十八段の「いぬとこたへよ」と同じ組み立てで、去る者が残る者に言づけを頼む型にあたる。
少将——近衛府の三等官。
恋しさ——恋い慕う気持ち。
死ぬ(ナ変動詞)——死ぬ。
思ひいづ(下二段動詞)——思い出す。
問ふ(四段動詞)——尋ねる。訪ねる。
あらば——あったならば。仮定を表す。
なし——いない。存在しない。
こたへよ——答えよ。命令を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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