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秋の夜を待てと頼めし言の葉に
今もかかれる露のはかなさ

歌の意味
秋の夜を待てと期待させたあなたの言葉に、今もかかっている露のはかなさよ。
鑑賞
115 言の葉の露

 右大臣が蔵人頭の職にあったとき、少弐のめのとという女性に「秋の夜を待てと頼めし言の葉に今もかかれる露のはかなさ」と贈った。女の返歌に「秋もこず露もおかねど言の葉は我がためにこそ色かはりけれ」とあった。以上が段の全体である。
 右大臣は右大臣に至った人で、この段では蔵人頭であったころのこととして語られる。蔵人頭は天皇の側近くに仕える役の長である。少弐のめのとについては、少弐にちなむ呼び名を持つ女性という以外、地の文に記載がない。
 場面の時期は秋である。歌に秋の夜が詠まれていることから知れる。
 詠出の直接の契機は地の文に記されない。示されているのは、蔵人頭であったころに少弐のめのとへ贈った歌である、ということだけである。
 女はこれに返しを詠み、贈答をもって段は閉じられる。この歌は続後撰集に収められている。

 「秋の夜を待てと頼めし」は、秋の夜を待てと期待させた、の意である。「たのむ」は下二段では期待させる意になる。相手がかつて言った言葉から歌を起こしている。
 「言の葉」は言葉を葉に見立てた語で、八十一段でも用いられている。葉であるから、そこに露が置く。
 「今もかかれる露」は、今もかかっている露、の意である。秋が来た今、その言葉の葉にかかっているのは、報われない涙である。
 結句の「はかなさ」は体言止めで、そのはかなさを名指したまま終わる。言葉を葉と見立てたことで、露が置くという景が成り立ち、その露が涙になる。約束の言葉が果たされないことを、葉と露の一続きの景で述べた一首である。

右大臣——太政官の官職。左大臣に次ぐ。
蔵人頭(くらうどのとう)——天皇の側近くに仕える役の長。
少弐(せうに)——大宰少弐。大宰府の次官。
めのと——乳母。
たのむ(下二段動詞)——期待させる。あてにさせる。
言の葉——言葉。言葉を葉に見立てた言い方。
かかる(四段動詞)——掛かる。露が置く。
はかなし——あっけない。頼りない。
出典
大和物語
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