露しげみ草のたもとをまくらにて
君まつ虫のねをのみぞなく
- 歌の意味
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露が多いので、草のような袂を枕にして、あなたを待つ松虫のように、声を上げて泣くばかりだ。
- 鑑賞
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117 君まつ虫
桂の皇女が源嘉種に詠み贈った歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
桂の皇女は桂に住まわれた皇女で、二十段、二十六段、七十六段、七十七段、百十四段にも歌が見える。源嘉種はその皇女のもとへ通っていた人で、七十六段では門前で一夜を明かし、七十七段では竹取物語の翁に自らを重ねている。
場面の時期は秋である。松虫が詠まれていることから知れる。
詠出の直接の契機は地の文に記されない。示されているのは、桂の皇女が源嘉種に贈った歌である、ということだけである。
段はこの一首で終わり、嘉種の返しも後日のことも語られない。この歌は新勅撰集に収められている。
「露しげみ」は、露が多いので、の意である。「み」が理由を表す。
「草のたもと」は、草のような袂の意で、露に濡れた袖を草に見立てている。袖が涙で濡れることは、この作品で繰り返し詠まれる。
「君まつ虫」の「まつ」に、待つことと、松虫とが掛かる。あなたを待つことと、松虫が鳴くこととが、この一語で重なる。二十四段の「君まつ山」も同じ掛詞を用いている。
結句の「ねをのみぞなく」の「ね」は音、声の意である。「のみ」の限定と「ぞ」の係りが重なり、泣くほかにできることがないことを強める。露、草、虫と秋の景を重ねながら、待つ身の嘆きを述べた一首である。
桂の皇女——桂に住まわれた皇女。
源嘉種(みなもとのよしたね)——桂の皇女のもとへ通っていた人。
しげし——多い。盛んである。
み——〜ので。理由を表す。
たもと——袖の袋状になった部分。
まつ——「待つ」と「松虫」との掛詞。
松虫(まつむし)——秋に鳴く虫。
ね——音。声。
のみ——〜だけ。限定を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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