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秋風の心やつらき花すすき
吹きくるかたをまづそむくらむ

歌の意味
秋風の心がつれないからだろうか。花すすきは、風の吹いてくる方をまず背くようだ。
鑑賞
130 花すすき

 これも筑紫にいた女の詠んだ歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
 詠み手については、これも筑紫にいた女という以外、地の文に記載がない。前の百二十九段も同じく筑紫の女の歌であり、二段続けて置かれている。
 場面の時期は秋である。歌に秋風と花すすきが詠まれていることから知れる。
 詠出の直接の契機は地の文に記されない。
 段はこの一首で終わり、相手も反応も語られない。百二十六段から続く筑紫の女たちの歌が、この一首で終わることになる。

 「秋風」の「あき」に、秋と、飽きとが響く。季節の風と、相手が飽きたこととが重なる。
 「心やつらき」は、その心がつれないからだろうか、という問いである。風に心があるとしたうえで、その心を問う形になる。
 「花すすき」は穂の出たすすきである。風になびく草として詠まれてきた。
 結句の「吹きくるかたをまづそむくらむ」は、風の吹いてくる方をまず背くのだろう、の意である。すすきが風に押されて向こうを向くという、目に見えるままの動きを述べている。だがそれは、飽きた相手から顔を背ける自分の姿でもある。風の心と草の動きという二つだけで、恨みを述べずに恨みを伝えた一首である。

筑紫(つくし)——九州の古称。
秋風(あきかぜ)——秋の風。「飽き」を響かせる。
つらし——冷淡だ。薄情だ。
花すすき——穂の出たすすき。
吹きくる——吹いてくる。
かた——方角。方向。
まづ(副詞)——まず第一に。真っ先に。
そむく(四段動詞)——背を向ける。
出典
大和物語
その他の歌