さわぐなるうちにも物は思ふなり
我がつれづれをなににたとへむ
- 歌の意味
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忙しく騒いでいるうちにも物思いはするものらしい。それなら私のこの所在なさを、何にたとえたらよいのだろう。
- 鑑賞
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136 さわぐなる
前段に続いて、また男が、このごろ忙しくて行けません、このように駆け回っている中でも、どうして来ないのだろうとあなたが思っているかと限りなく心配しています、と伝えてきたので、女が詠んだのがこの歌である。地の文はこれだけで、段はこの一首をもって閉じられる。
詠み手は前の百三十五段と同じ三条の右大臣の娘である。男は堤の中納言、すなわち藤原兼輔である。
場面は、兼輔が宮仕えに追われて通えずにいた時期である。
詠出の直接の契機は、忙しい中でもあなたを案じている、という兼輔からの言葉である。歌はその返事として詠まれた。
段はこの一首で終わり、兼輔の反応も後日のことも語られない。前段と合わせて、同じ二人の話が二段続く形になっている。
「さわぐなるうちにも」は、忙しく騒いでいるうちにも、の意である。「なり」は伝聞
推定を表し、相手が言ってきた内容をそのまま受け取っていることを示す。
「物は思ふなり」は、物思いはするものらしい、の意である。相手が、忙しい中でも案じていると言ってきたのを、そういうものらしい、と受ける形になる。
「我がつれづれを」は、私の所在なさを、の意である。「つれづれ」は、することもなく手持ちぶさたなさまをいう。忙しい相手と、何もすることのない自分とが、ここで対に置かれる。
結句の「なににたとへむ」は、何にたとえようか、という問いである。忙しくてなお物思いをするというなら、暇な自分の物思いはどれほどか、たとえようもない、という筋になる。相手の言い分をそのまま受け取ったうえで、その論法を自分に適用して返す型である。
さわぐ(四段動詞)——忙しく立ち回る。騒ぐ。
なり——伝聞
推定を表す助動詞。〜らしい。
うちにも——〜している最中にも。
もの思ふ——思い悩む。恋しく思う。
つれづれ——することもなく手持ちぶさたなさま。
なに——何。
たとふ(下二段動詞)——たとえる。なぞらえる。
む——〜しようか。意志
推量を表す。
- 出典
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大和物語
- その他の歌
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